鏡のような日本刀の砥ぎ方
鏡のように顔を映すほど研ぎあげられた日本刀。しかしただ光り輝くだけではなく、あるいは淡く、あるいは渋く、非常に複雑な光沢をもっていることがわかります。
日本刀はいったいどのようにして研がれているのでしょうか。刀剣研師である本阿彌(ほんあみ)光州氏の工程を例にとってみてみましょう。
基本的には、砥石を使って粗い粒子のものから徐々に細かい粒子のものに替えながら、段階的に仕上げていきます。
順番の一例では、「下地研ぎ」として、備水砥(びんすいど)→改正砥(かいせいど)→中名倉砥(ちゅうなぐらど)→細名倉砥(こまなぐらど)→内曇刃砥(うちぐもりはど)と、複数の砥石を使い分けて研ぎあげていきます。そして、酸化鉄を主成分に丁字油でゆるく溶いた「金肌拭い液」という特殊な研磨剤や、さらに粒子の細かい砥石をを用いて「仕上げ研ぎ」を行います。
備水砥(びんすいど)は天草地方産の黄白色の石で、人造砥石では400〜800番に相当します。改正砥(かいせいど)は山形県産で赤茶や黄白色、1000番ほどにあたります。中名倉砥(ちゅうなぐらど)・細名倉砥(こまなぐらど)はともに愛知県南設楽郡産の黄白色の石で、中は1500〜1800番、細は2000番ほどに相当します。
内曇刃砥(うちぐもりはど)は京都山城産で灰色や青灰色、4000〜6000番にあたります。
さらに仕上げ研ぎに使用される鳴滝砥は京都産の黄白色、4000〜5000番ほどといいます。
かくも多くの工程を経て研ぎあげられる日本刀ですが、単純に均質な研磨を行うのではなく、焼き刃が光を乱反射して白く見える「梨子地(なしじ)」とする処理を施すなど、日本刀の品位を決定づける特殊な技法が盛り込まれています。
〈参考文献〉『歴史群像シリーズ68 戦国剣豪伝』 学研 2003、『日本刀 職人職談』 大野正 光芸出版 1971
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